人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

象を読む人 象を書く人

elefantasy.exblog.jp

象 を通して出会うこと。出会う人。

動物介在教育入門 ①

動物介在教育入門 ①_f0362800_08381051.jpg

2人の著者の専門分野は 「人間動物関係学」。
"飼育動物や ペット、野生動物、家畜など 動物を飼うこと、動物と共に生きること
について考える" 新しい研究分野なのだそうだ。

あとがき によると、著者の幼少時代は まだ自然が豊かで、様々な生き物に
ふれる機会が豊富だった、と仰るから、恐らく私と同年代でいらっしゃるかも
しれない。急速に進む自然環境の荒廃、社会システムの変容が 著者の目を
この分野の研究に向けさせた という。

私はといえば、先週、「市原ぞうの国」での動物との接し方もさることながら
"ネコとふれあいコーナー" (¥300支払ってネコに触り放題) で垣間見た光景が
気になり、動物との「ふれあい」とは何なのか
改めて考えていた所で出会った本だった。

最近、どこの動物園でも「ふれあいコーナー」が設けられており、たいていは
モルモットや ヤギ、ポニーといったところだが、子供も大人も直接抱いたり、
撫でたりして楽しんでいる。一応時間は限られて、飼育員の管理下のもとで
行われるはずだ。

動物が好きでも 自宅で動物を飼えない状況にあったり、こんな機会がある事で
動物に興味を持ったり、好きになる子供もいることだろう。

ただ、誰が使い出した言葉なのか、「触れ合い」が 「ふれあい」とひらがなになる
事で 何か誤魔化される部分が無きにしもあらず ではないだろうか?
ヒトが 一方的に触らせて頂いているのに。

子供への情操教育を担った動物は、保育園、幼稚園、小学校でも多く飼われて
心の成長に貢献しているはずなのだが、著者は長年の研究対象の事例から
その問題点も浮き上がらせる。

ウサギの尻尾を引きちぎって、取れちゃった とぬいぐるみと区別がついていない子、
ハムスターを事故で死なせてしまっても、また買ってくればいいじゃん、と言う子、
強く抱きすぎて窒息させる、あるいは 立ったまま抱いて落としてしまい骨折させる。

著者は、そんな事例から 動物と触れさせる前に、先生や保護者が子供達に
動物の扱い方をちゃんと教えなければいけない、と考えるのだが、
そのうちに 保護者や先生こそ 動物固有の生態や習性を知り、命の重みを感じることが
必要なのだ、と思い至ったに違いない。(直接的には書いていないけれど)

「動物は魔法の杖ではない。」 控えめながらにも著者はそう繰り返している。

子供が 動物を育てることで、 他者を思いやる共感力を養い、豊かな感性や
自尊心、自制心、自立心が芽生えるのは 様々な形で証明もされて来た。
しかし、動物を飼うだけで 自動的にそれらが達成される訳ではない。

そんな「当たり前のこと」が 当たり前でないことを 認識しなければならないほど
ヒトと動物の関係は 変容してきている。

飼っている動物に対して 子供がどれだけ愛情を持って接っするかにより
心に育まれるものは異なるし、又 保護者や 先生の飼育に対する無意識の気持ちは
そのまま子供に伝わることも知っておかなくてはいけない。

「動物の生態 習性を体験的に教えつつ、
動物の気持ちを理解する心を育もう、とする努力を積極的にしなければ、
子供は虐待しているつもりはなくても 動物は苦痛に苛まれている。」

私が 市原ぞうの国にあった 「ネコとのふれあいコーナー」で感じたことも
結局 そういう事だったと思う。

「ぞうの国」に 猫を捨ててゆく人も後を絶たないそうだ。そんな猫達を救う
優しい気持ちから生まれた「手立て」なのかもしれない。でも 見た限り
その気持ちが伝わっているとは思えない。

どうしたらよいか、
著者は マニュアルとしてではなく、事例を上げながら動物介在教育の課題
可能性を提示している。

つづく。











by maria-elephant | 2017-02-27 16:02 | 動物のいのちを考える

by elefantasy