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象を読む人 象を書く人

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象 を通して知る事、学ぶ事、出会う人達

ひいお祖母さん象たちは、ふるさとで、昔の仲間としばらく過ごしていた。

しかし、その辺は、牙を抜かれた仲間の白骨が散乱していたり、
銃声が聞こえてきたり、悪いことが起こりそうなのだ。

ひいお祖母さん象は 再び大草原の向こうへ 46頭の群れを連れて行こうと決めた。

日が昇る方へ何日も歩くと そこは以前 砂嵐に巻き込まれた辺りだった。
ひいお祖母さん象は 懸命に何かを探している。
そして 臭いを嗅ぎつけて 走り出した。
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それは 砂嵐のあと、ここで苦しんで死んだ娘の骨。

群の皆も 骨の匂いを嗅いで 死んだお婆さん象を思い出すのだった。
そして 骨を森まで持ち帰ろう、と皆がお婆さん象の骨を牙と鼻の間に挟み持った。

一列に並んだ 46頭の象の行列が お婆さんの骨を持って続く。
弟ライオンは独り立ちし、妹ライオンは死んでしまって、
ひとりになった姉さんライオンや、マングースがそれを見送る。

森に着くと、砂嵐の時 行方不明になってしまった親子が待っていた。

ひいお祖母さん象が 娘の牙を静かな森の中に置くと
ほかの象達も そのそばに 持っていた骨を置いた。
骨の様に白い枯れ枝を 乗せた象もいた。

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46頭の象の行列を、お葬式 と呼びながらも
作者はそれを、夢のような、影絵のような、 と繰り返し、
見開き8ページを費やしている。

そのページをめくりながら まさに走馬燈のごとく 私達読者の頭には
前の16冊で出会った たくさんの動物達の関わりや出来事がかけめぐる。

作者 吉田遠志にとって、この象の行列は 凝縮された 83年の人生に違いない。
しかし、そう感傷的に汲み取るのは 私自身なのであって、
文体は感情表現無しに、むしろ淡々と 象の群れを 安住の森へと送ってゆく。

もし 17冊を貫くテーマを一言にするなら、それは 自然界の法則 という事に
なるだろうと思う。
今時の言葉では、生物多様性のバランス だろうか。

それは明確なテーマではあるけれども、私自身はこのシリーズの構成、詰まるところ
作者のモノの見方、考え方、アーティストとしての生き方に強く刺激を受けた。
その事については、改めて書く機会があると思う。

当初 20巻の予定だったシリーズは この17巻目「かれえだ」で最後になって
しまったけれども、作者のアイデアには、象の物語はこの前にまだ3冊分 きっと
あったと思う。作者自身 象の不思議な行動には 心打たれているのだから。

ともかくも
この作品中の48頭の象も 現在世界中に生き残る象達も
作者から 私達ひとりひとりに 託された事を 忘れてはならない。














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# by maria-elephant | 2017-04-21 23:53 | 象を書く人 | Comments(0)
(いなびかり から続き)

雨期が訪れ 草原が緑を取り戻してきた。
稲光のおかげで ライオンから命拾いした 学者ヌーは、
群の仲間をさがしに駆け出した。

草原は 緑の海だ。ヌー達は美味しい草を食べ太り、
新しい命が 生まれる時でもある。
迷子同士だった メスとオスの赤ちゃんヌーもすっかり成長している。
メスのお腹には 子どもがいるようだ。

平和な光景に 突然 割り入ったて来たのは チーターだった。
お腹が重くて速く走れないそのメスが 捕まってしまう。
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リーダーとなった学者ヌーはそれに気付き、迷子友だちのオスと共に
仲間を引き連れてメスを助けに 駆け出す。
その迫力に チーターは驚いて逃げ出してしまう。
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、、
メスとお腹の赤ちゃんは、助かった。
もうすぐ 新しい命が生まれるはずだ。

「あたらしいいのち」のテーマは 作者 吉田遠志にとっても不可欠のテーマに
思われる。迷子だったヌーを まるで孫の成長を見守るような 温かい目がある
と同時に、その目はいつでも彼らを試練に立ち向かわせている。

色彩を削いで 簡潔さに美を求める構図は
もはや 子供のための絵本の域を脱している。





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# by maria-elephant | 2017-04-21 23:51 | 動物を書く人
救いようがない、とでも言いたくなるような
象の悲劇の物語が続いた後、
やっと象たちに 平和を与えて 作者は再びヌーに戻った。

水を探しながら大移動しているのは 象ばかりでなく、
ヌーは 数万匹という大所帯での移動だ。

作者は何故か、学者の様な難しい顏をしたリーダーに焦点を当てる。

例の片目のハイエナが 仲間を引き連れ現れた。
学者ヌーは オトリになって走り ハイエナを群れから離そうとしたのだが
逆に ハイエナの罠にかかり、沢山のハイエナに囲まれてしまう。

その経過に 作者は不思議なくらい 何ページも 何ページも 費やしている。

結局 学者ヌーは 決死の覚悟で囲みから脱出し、疲れ果てるまで逃げ切った。
草食動物は 体で汗をかき体温を保てるので 長く走れるのだ。
肉食動物は 汗をかかず 長距離を走るのは不得意である という。

学者ヌーは さすがに疲れ果て 居眠りしてしまう。
ハッと気づくと、そこにライオンが居る。
独り立ちした、あの 弟ライオンだった。

2頭は 命をかけた決闘に挑むように対面する。
学者ヌーは もう逃走する力はなく、身構えた。

すると 突然、 稲光が走り 雷がとどろく。
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弟ライオンは、きっと世にも恐ろしい思いをしたのだろう。
大雨が降りだし 学者ヌーが気付くと
ライオンはもう居なかった。
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作者 吉田遠志は この学者ヌーに 自分を投影していたのではないか、
と思われて仕方ない。

この「いなびかり」が出版された時点で シリーズ始まって9年が経っている。
文中に ヌーが「最後の力をふり絞って」とあるのを見ると
思わず 胸が苦しくなる。


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# by maria-elephant | 2017-04-21 23:50 | 動物を書く人 | Comments(0)
そこに 突然 立派な牙を持つオス象が現れた。 (13巻 よびごえ の続き)

やっとの思いでたどり着いた故郷にも 水はなく
ひいお祖母さん象が 力尽きてしまったので、
まだ若いオバさん象は 助けを求めて鳴いたのだ。

そのオス象は ひいお祖母さん象を見ると 懐かしそうに鼻で挨拶するのだった。
昔の知り合いなのだろうか。

オス象は ひいお祖母さん象の群れを バオバブの木へ引き連れていく。
木の皮には、水がたくさん含まれているのだ。
皆 最後の力を振り絞って歩いた。

それから 再びオス象の後について行くと、とうとう 水をたたえる川が見えてきた。
象たちは やっと川に辿り着き、夢中で水を飲んだ。
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川に浸かる ひいお祖母さん象。
牙には 娘を安楽死させた時の血が まだ付着している。

対岸から 別の象の群れが現れ、ひいお祖母さん象に気付くと近寄って来た。

その中の 歳とったメス象と、案内してくれたオス象、そしてひいお祖母さん象は、
小さい時同じ群れの中で育ったことを 互いに匂いで思い出した。

トビバッタの大群に襲われた時、離れ離れになってしまった友達だ。(4巻おもいで)

リーダー同士が親しそうなので それぞれの群のメンバーも互いに近寄った。
無垢な赤ちゃん象達が 一緒に遊び出す。
それを見ていた大人の象達は 皆 ひとつの群れのように親しくなるのだった。
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この「ふるさと」には 次のような作者のコメントが付けられている。

「、、、できれば、全ての物語を読んで頂きたいと思います。
何故ならこのシリーズは ゾウ以外の動物たちの物語も含めて、
すべての物語が、たがいに関連しあいながら展開しているからです。

なぜ そのような、形式をとりいれたかたといいますと、野生動物たちの
作り出す 壮大な自然の世界は、ひとつひとつのドラマが、互いに深く関連
し合って初めて真実の姿となるからです。」

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# by maria-elephant | 2017-04-19 11:17 | 象を書く人 | Comments(0)
水を求めて 12頭の象の群れは 歩き続けている。
ひいお婆さん象は、小さい頃 水浴びした 故郷の池を思い出した。
遠い日、トビバッタの大群に襲われて 生まれ故郷を去ったのだった。(4巻 おもいで)

皆を連れて故郷に向かう行く手に 砂嵐が襲う。
小さい赤ちゃん象が飛ばされた!。
あと2頭の赤ちゃんは それぞれ母親象が抱きかかえ、
病気のお婆さん象も皆で取り囲んで守ってあげている。
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砂嵐が去ると 赤ちゃんを追った母親象は 行方不明になってしまった。

病気のお婆さん象は、もう立ち上がれない。
もう、楽にして、と 彼女の母親である ひいお祖母さん象に目で訴えている。

ひいお祖母さん象は 辛い辛い決心をしなければならなかった。

後方に下がると、じひびき を立てて 苦しむ娘のお婆さん象に全速力で向かった。
牙の一撃で、お婆さん象は 静かに永遠の眠りについたのだった。

いつまでも悲しんでいられない。
群は ひいお祖母さんの故郷に向かって 長い長い旅を続ける。
そしてやっと 懐かしい故郷の土の匂い。

ところが ひいお祖母さんが小さい頃あった 大きな池にも
水は一滴も残っていなかったのだ。
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その時、遠くから 地響き の音が聞こえた。





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# by maria-elephant | 2017-04-19 11:16 | 象を書く人 | Comments(0)